新型コロナウイルスのゲノム解析結果を公表

~無症候者を対象にした唾液PCR検査で収集した検体を解析し、変異株の国内発生状況を調査~

2022年1月28日
SB新型コロナウイルス検査センター株式会社

ソフトバンクグループ株式会社の子会社であるSB新型コロナウイルス検査センター株式会社(以下「SB新型コロナウイルス検査センター」)は、国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(以下「国立国際医療研究センター」)と実施している、新型コロナウイルス変異株のゲノム解析および発生状況に関する共同研究の一環として、PCR検査で収集した唾液検体から検出した新型コロナウイルスのゲノム情報を解析し、その結果を公表しました。

この研究は、新型コロナウイルスのゲノム解析を通して、変異株情報を収集・分析し、日本国内における新型コロナウイルス感染症の発生状況を適切に把握する一助となることを目指し、SB新型コロナウイルス検査センターと国立国際医療研究センターが共同で2021年5月から実施しているものです。

このたび公表したデータは、SB新型コロナウイルス検査センターが2020年10月から2021年10月の間、無症候者を対象に実施したスクリーニング検査で収集した唾液検体の一部を使い、新型コロナウイルスの全ゲノム情報を次世代シーケンシングで解析したものです。さらに、国立国際医療研究センターで、この新型コロナウイルスのゲノム情報を基に、病原体ゲノムデータ解析のためのオープンソースプロジェクトである「Nextstrain」が提供するツールを用いた分子系統学的解析を実施しました(図1)。

図1. 新型コロナウイルスの分子系統学的解析

図1 新型コロナウイルスの分子系統学的解析

「GISAID」から取得した国内外の新型コロナウイルスゲノム(852配列)とSB新型コロナウイルス検査センターで解析したゲノム(594配列、〇で表示)を用い、Nextstrainで解析したもの。

分子系統学的解析の結果、2020年12月以降、英国由来でB.1.1.7系統の変異株である「アルファ株 [20I (Alpha, V1)]」が徐々に検出され、2021年5月末までにはゲノム解析した検体のおよそ85%以上を占めることがわかりました(図2上)。また、「第5波」と呼ばれる2021年7月以降の感染拡大期には、インドで最初に検出され、L452R変異を有するB.1.617.2系統の変異株「デルタ株 [21J (Delta)]」の割合が著しく増加し、2021年8月末には95%以上を占めていることがわかりました。この結果は、新型コロナウイルスなどのゲノム情報を公開しているデータベース「GISAID」が提供する国内配列データと同様の傾向を示しています(図2下)。

図2. 各観測時点における変異株の頻度

図1 新型コロナウイルスの分子系統学的解析

新型コロナウイルスのゲノム解析の概要

  • 解析検体数:594検体(唾液)
  • 検体収集期間:2020年10月〜2021年10月
  • 解析方法:イルミナ社COVIDSeqテスト、BaseSpace DRAGEN COVID Lineage
  • 解析装置:イルミナ社NextSeq 2000
  • 分子系統学的解析:Nextstrain(https://nextstrain.org/)。解析には東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピュータSHIROKANE(http://sc.hgc.jp/shirokane.html)を利用しました。
  • 検査施設:「東京PCR検査センター」(運営:SB新型コロナウイルス検査センター、所在地:千葉県市川市国府台1丁目7-1 国立国際医療研究センター国府台病院 旧外来管理棟2階)

「東京PCR検査センター」の精度管理責任者を務める、国立研究開発法人 国立国際医療研究センター臨床研究センター 杉浦 亙 センター長は次のように述べています。
「今回の結果は検査時無症候の症例の解析結果ではありますが、 アルファ株、デルタ株の動向が図2のGISAID国内配列で示す有症状患者とほぼ一致しており、納得できる結果です。いずれの株も有症状患者より無症候者の立ち上がりが急峻で先行するようにも見え、これが単に解析症例の偏りによるものなのか、あるいはアーリー・ウォーニング・サイン(早期の警告兆候)として無症候者の観察に疫学的な意味があるのか、引き続き解析数を増やしながら生命情報学的視点から分析したいと考えています」

SB新型コロナウイルス検査センターは、国立国際医療研究センター、北海道医療大学および東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターの協力を得て、既存の唾液PCR検査施設を活用して、新型コロナウイルスのゲノム情報を解析し、ウイルスの変異を特定する事業を2021年6月に開始しました。今後も新型コロナウイルスのゲノム解析結果を分析し、変異株の監視体制強化に協力することで、新型コロナウイルス感染症の拡大防止へさらなる貢献を目指します。

SB新型コロナウイルス検査センターについて

SB新型コロナウイルス検査センター株式会社は、ソフトバンクグループ株式会社の100%子会社です。新型コロナウイルスの唾液PCR検査を行う専用施設である「東京PCR検査センター」(千葉県市川市)、「北海道PCR検査センター」(札幌市北区)、「福岡PCR検査センター」(福岡市早良区)を拠点に、1回当たり2,000円(税抜き、配送・梱包費などを除く)の実費負担だけで唾液PCR検査を提供しています。全検査施設を合わせて1日に約2万1千件の検査が可能で、2021年12月までに約340万件の検査を行ってきました。現時点で東京都が公募した「福祉施設における検査の実施に係る協力事業者」に選定されている他、北九州市や福岡市、千葉県松戸市、千葉県市川市、札幌市、熊本市、福岡県久留米市、北海道石狩市、北海道北見市、京都府、群馬県、福岡県飯塚市、福岡県八女市、滋賀県、三重県などの自治体に、唾液PCR検査を提供しています。また、法人の検査提供先には、福岡ソフトバンクホークスやB.LEAGUE、ソフトバンクのグループ企業などがあります。2021年2月には、個人向け唾液PCR検査サービス「HELPO PCR検査パッケージ」の提供を、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社と共同で開始しました。
また、ソフトバンクグループが2021年6月に開始したワクチン接種の会場運営に携わり、ワクチン接種を推進してきました。
SB新型コロナウイルス検査センター株式会社は、事業を通して仮に利益が出た場合は医療機関などへ寄付などをしていきます。

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